批評社『しんとく丸の栄光と悲惨』装画
『しんとく丸の栄光と悲惨 上方文化の源流を訪ねて 業縁と輪廻の世界』の装画を制作しました。
[著者:福井栄一 / 出版社:批評社(2021年11月 刊行) / 装丁:臼井新太郎]
説経節(日本の中世末から近世にかけて盛んに行われた語りもの芸能・語りもの文芸)の象徴的な演目の一つ「しんとく丸」の解説本です。
「主人公であるしんとく丸を描いてほしい」というご依頼を受け、しんとく丸の物語自体はおどろおどろしい話ではあるものの「装画は内容とは反対に静謐な画風の絵でいきたいので、あまり不気味な雰囲気にはならないように」というご要望をいただきました。
それをもとにラフを2点ご提案して今回の構図に決まりました。
表1に四天王寺の稚児舞の舞い手に選ばれた幸福だった頃のしんとく丸を、裏側の表4に義母の呪いによって失明し、業病を患って物乞いになる不幸のしんとく丸を配置し、しんとく丸の栄誉と悲劇の対比を意識して制作しました。
稚児舞の衣装は、実際の四天王寺の聖霊会で子供たちが踊る「童舞・胡蝶」の衣装を参考にしています。